パワーハラスメント防止措置義務の内容
目次
Q.パワーハラスメントに関して企業はどういった措置を講じないといけないのでしょうか
事業主には、パワーハラスメントを防止するため、大きく4つの防止措置義務が課されています。パワハラ防止指針では、各措置義務の内容だけでなく、適切に講じられているとされる例も記載されており、企業はこれに従った対応をすることになります。なお、あくまで例示に過ぎず、全て例示どおりに行わなければならないというわけではありません。趣旨に合致していれば他の方法で行っても構いません。
4つの措置義務以外にも事業主が行うことが望ましい取り組みについて記載がされています。これは法的な義務ではないものの、企業の安全配慮義務や職場環境配慮義務の有無に関して考慮される事情となり得ますので、可能な限り取り組むべきでしょう。
では、パワハラ防止指針に定められた措置義務をそれぞれ見ていきましょう。
【4つの措置義務】
具体的な導入方法については、こちら
事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発(措置義務①)
措置義務の内容 | 適切に講じていると認められる例 |
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◆職場におけるパワーハラスメントの内容及び職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること |
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◆職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。 |
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多くの企業は、就業規則の服務規律や懲戒規定のところへパワーハラスメントに関する規定を設けていると思います。本則とは別にハラスメント防止規定を設けている場合にはハラスメント規定も労働基準監督署へ届け出ることを忘れないでください。就業規則は大丈夫だと思いがちですが、次の点は注意してください。
定義に合致しているか
一昔前の就業規則では「優越的な地位を背景とした言動」ではなく、「職務上の地位を背景とした言動」となったままの可能性があります。
全労働者が懲戒規定の適用対象となっているか
正社員向け、パートタイマー向け、期間の定めのない労働者向け、嘱託社員向けなどと適用範囲を限定して就業規則を策定している企業も少なくないでしょう。全労働者が懲戒規定の適用対象者になっているか確認が必要です。
全労働者がパワーハラスメントの被害者とされているか
各規程において、適用を受ける労働者を「従業員=正社員」としておいて、懲戒規定の部分で「従業員が、他の従業員に対してハラスメント行為を行った場合」となっていると、正社員以外へのパワーハラスメントに関しては行為者を懲戒処分できなくなってしまいます。「従業員が、他の労働者(期間の定めの有無、パートタイム労働者、派遣労働者、嘱託社員などの名称を問わない。)に対してハラスメント行為を行った場合」などとしておくべきです。
※効果的な導入方法はこちら
相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備(措置義務②)
措置義務の内容 | 適切に講じていると認められる例 |
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◆相談への対応のための窓口(以下「相談窓口」という。)をあらかじめ定め、労働者に周知すること。 |
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◆相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。 |
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相談窓口の役割を、本当に相談に乗ることだと勘違いされていることがありますが、相談窓口は、事実を聞き取ることが役割であって、評価や対応を判断する必要はありません。もちろん、被害者の方は不安を抱きながら相談してこられるので、真摯に傾聴する姿勢は重要です。パワハラ防止指針の記載だけでは抽象的過ぎますので、これだけでは形式的に相談担当者を決めて終わりとなりかねません。
※効果的な導入方法はこちら
職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応(措置義務③)
措置義務の内容 | 適切に講じていると認められる例 |
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◆事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること。 |
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◆職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害を受けた労働者(以下「被害者」という。)に対する配慮のための措置を適正に行うこと。 |
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◆職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者に対する措置を適正に行うこと。 |
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◆改めて職場におけるパワーハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること(事実が確認できなかった場合においても同様の措置を講ずること。)。 |
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※効果的な導入方法はこちら
①~③と併せて講ずべき措置(措置義務④)
措置義務の内容 | 適切に講じていると認められる例 |
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◆相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること。 |
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◆職場におけるパワーハラスメントに関し相談や措置義務への協力等をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。 |
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※効果的な導入方法はこちら
望ましいとされる取組
取組の内容 | 取組例 |
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◆セクシャルハラスメント、マタニティハラスメントその他のハラスメントの相談窓口と一体的、一元的に相談に応じることのできる体制整備。 |
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◆コミュニケーションの活性化や円滑化のために研修等の必要な取組。 |
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◆適正な業務目標の設定等の職場環境の改善のための取組。 |
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◆事業主が自らの雇用する労働者以外の者に対する言動に関し行うことが望ましい取組。 |
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◆他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組 |
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